今回は「退職後の税金」についてです。
退職前と退職後の税金の違いについて説明していきます。
スグに転職しないのを前提にしていますが、「全部自分でやる」というのが大きな違いです。
とはいえ、手間がかかるのは「確定申告」くらいなので、それほど気張ることでもありません。
退職後の税金は全て自分で対処

会社で働いている間は所得税も住民税もすべて会社が払ってくれています。
月々のお給料から天引きされ、年末調整で支払いの過不足を調整するという形です。
会社で働いている間は基本的に年末調整くらいしかやることがないので、税金を意識するのは消費税と源泉徴収くらいかもしれませんね。
退職すると「会社にやってもらっていたこと」は全て「自分でやること」です。
年末調整でやっていたことを確定申告でやらないといけませんし、税金の支払いも自分で行うことになります。
年内に転職する場合は転職先がやってくれますが、年をまたぐと確定申告をやるのは自分です。
では以下、所得税と住民税の場合に分けて説明していきます。
退職後の税金①「所得税」

まずは所得税についてです。
所得税の仕組み
所得税は個人の所得に対してかかる税金です。
所得から所得控除を差し引いた残りの所得(課税所得)に税率を適用し、税額を計算します。
会社員の場合、所得税の支払はあらかじめ1年の収入を想定して、想定した年収を月割にして源泉徴収。
そして年末調整で生命保険・医療費などの各種所得控除後の金額を出し、あらかじめ支払った所得税額と控除後の税額の差分が調整されます。
払いすぎの場合は還付、足りない場合は追加徴収という形です。
退職後はこの年末調整が確定申告に変わるというイメージ。
確定申告をしないと払いすぎた所得税は返ってきませんので、必ず確定申告をするようにしましょう。
確定申告
確定申告は会社が年末調整で行ってくれていたことを自分で行うイメージです。
退職後に確定申告が必要になるのは、年内に転職できず、年末調整を受けられなかった場合になります。
退職後に発行される源泉徴収票や生命保険・医療費などの控除証明書を元に自分で役所に申告するという流れになります。
他に収入がある場合はそれらも加算です。(失業保険は対象外)
この確定申告が退職前後の税金絡みで一番違ってくるポイントになります。
初めて確定申告を行う場合でも、現在はe-taxという確定申告書作成のためのシステムを使えば、それほど難しくはありません。
なにか自分で事業を行っている場合は、必要経費の計算などをやらなければなりませんが、退職後に無職という場合なら書類作成は非常に簡単です。(悲しいけど)
上にも書きましたが、退職後に確定申告をしないと払いすぎた分の所得税は返ってきません。
確定申告をしないとほぼ間違いなく損をするので、必ず確定申告をしましょう。
年内に転職できなくても年末調整をしてもらえる場合も
基本的に年内に転職できなかった場合は確定申告が必要になりますが、年末調整をしてもらえる場合もあります。
年内スグに転職した場合は、退職した会社から源泉徴収票を発行してもらい、転職先に提出。そして転職先でまとめて年末調整という流れになります。
年内に転職できなかった場合は退職した会社から発行してもらった源泉徴収票を元に自分で確定申告という流れになります。
ただし年内に転職できなかった場合でも12月に給与の支払いを受けた後に退職日となる人は退職前の会社で年末調整を受けることができます。
給与の支払い前に退職日を迎える人は自分で確定申告をする必要がありますので、退職日と給与の支払日はチェックしておきましょう。
例:
給与支払い:12月25日、退職日:12月31日→年末調整
給与支払い:12月25日、退職日:12月15日→確定申告
ちなみに年内に転職しても確定申告をする必要がある場合も紹介しておきます。
- 給与の年間収入金額が2000万円を超える
- 会社の給与以外からの所得が合計で20万円を超える
- 退職金などの所得の税額が源泉徴収金額より多くなる人
などなど、あります。
とはいえ大部分の方は対象ではありません。
国税庁のサイトに確定申告が必要な方一覧があるので、気になる方は一度チェックしてみるといいでしょう。
退職後の税金②「住民税」

次に住民税です。
現在住んでいる市町村及び都道府県に支払う税金ですが、これも退職前はお給料から天引きして、会社が支払っています。
住民税の仕組み
住民税は前年の1年間(1~12月)の所得から計算し、その翌年の6月から翌々年の5月までを納付期間として支払っていきます。
例:2018年1~12月の所得分で計算した住民税を2019年6月~2020年5月の納付期間で支払う
退職前は会社が6月~5月までの間、住民税を12等分して毎月お給料から天引きされていきます。
退職後の住民税の支払い
退職後の支払いについては1~5月に退職するか、6~12月中に退職するかで変わります。
1~5月に退職した場合、退職月の前月まではお給料で毎月分天引きされ、退職月に残りの住民税を一括で天引きになります。
例:3月退職の場合は5~2月分は毎月のお給料で天引きされ、3月に3~5月の3ヶ月分を一括で天引き
6~12月に退職した場合、
- 退職月に残りの月分の住民税を一括天引き
- 退職月分までを天引きにして、残りを毎月自分で役所に直接納付
この2つから選択できます。
一括天引きにすると最後の給料・退職金の手取り額がかなり減ることから、②の残りを毎月直接納付する人が多いようです。
ちなみにぼくは一括天引きにしました。
どうせ払わないといけないですし、毎月納付する手間が面倒だったので。
このあたりはそれぞれ自分の考え方で決めるといいと思います。
退職後の税金③退職金と税金

退職金を受け取る場合には、退職金にもお給料と同じく所得税と住民税がかかってきます。
もし実際に受け取った退職金が予定よりも少ないと感じたなら、源泉徴収として所得税と住民税が差し引かれた分が手元に入ってきているからです。
ただし退職金は他の所得よりも税負担が軽くなるように配慮されているので、他の所得と分けて計算されます(分離課税)。
退職金にかかる所得税・住民税の計算については「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すると会社が正しい税率で計算してくれます。
もし「退職所得の受給に関する申告書」を退職時に会社に提出していない場合は税率が一律20%で計算され、退職金から特別徴収です。
特別徴収されたは退職金にかかる税金を払いすぎている可能性があるため確定申告をしましょう。払いすぎている場合には還付されます。
そもそも「退職所得の受給に関する申告書」は必ず提出しましょうね。
まとめ|退職後の税金はそれほどややこしくない

以上退職後の税金について紹介してきました。
基本的に
- 所得税は確定申告
- 住民税は支払いをどうするか(月割か一括)
- 「退職所得の受給に関する申告書」の提出
をおさえておけば大丈夫です。
住民税については退職月によっては選択の余地もありませんし、「退職所得の受給に関する申告書」は忘れずに出しましょう。
ややこしく感じるのは確定申告ですが、他に自分で事業をやっていたり収入がある場合以外は簡単です。
ただし確定申告は期限内に必ずやらなければ、還付を受けられず、損をする可能性があります。
確定申告を早めに忘れずにやることだけは頭に入れておくようにしましょう。