今回は「退職時の有給休暇消化」についてです。
転職するにしろ、退職するにしろ、残っている有給休暇は消化したいものですよね。
普通に働いている間は
「有給休暇なんて取ったことない!」
という方も多いのではないでしょうか。
最近では有給取得の義務化もされましたが、
- 義務とされている以上の日数を取れない
- 取ったことにされている
という人もたくさんいますよね。
せめて退職するときくらいは…!
ということで、この記事では
- そもそも有給休暇とはどういう制度か
- 退職時に有給休暇を消化できない理由
- 有給休暇を消化するための方法
- 有給休暇の買い取りについて
を紹介していきます。
転職・退職時に上手く有給休暇を消化したい人はぜひ読んでみてください。
1.そもそも有給休暇とは?|労働者の権利!

正式名称「年次有給休暇」こと有給休暇とは、労働基準法第39条で認められた権利です。
有給休暇を使うことで、休みながらもお金をもらうことができます。
ここはご存知だと思います。
この権利は雇用開始日から6ヶ月以上継続勤務し、全労働日数の8割以上出勤した労働者に与えられます。
これは正社員だけでなく、非正規社員も同様です。
ただし、週4日労働以下の場合は付与日数は週の労働日数に応じて少なくなります。
以下は継続勤務年数と年数に対応した有給休暇の法定最低付与日数の表です
継続勤務年数 | 法定最低付与日数 |
---|---|
半年 | 10日 |
1年半 | 11日 |
2年半 | 12日 |
3年半 | 14日 |
4年半 | 16日 |
5年半 | 18日 |
6年半以上 | 20日 |
継続勤務年数6年半以降は毎年20日間付与されていきます。
有給休暇は翌年に限って繰り越しができるので、全く使っていなければMAX40日残っているということになります。
義務化後はMAX35日のはずですね。
有給休暇の取得率っていくつなの?
平成31年就労条件総合調査によると
年次有給休暇の取得率は52.4%
となっています。
平成29年:49.4%
平成30年:51.1%
ですので、徐々に改善されています。
ちなみに有給休暇の労働者1人平均では
- 平均付与日数:18日
- 平均取得日数:9.4日
となっています。
平均で9日は有給休暇を取っているということですね。
…ほんと!?
ぼくが働いていた会社(スーパー)では
ちなみにぼくが以前働いていた小売業では
- 取得率35.8%(51.1%)
- 平均取得日数は6.5日(9.3日)
となっています。
※31年の調査概要には業界別が掲載されていませんでしたので、平成30年の調査概要を参考にしており、()内は全体の平均です。
会社では一応有給休暇を取るための措置として、従業員に半期に2日の取得を義務付けていました。
(年5日が義務になってからは増加。)
ですが、実際に取っていた人はどれくらいいるのかわかりません。
期末になってから、有給を申請して出勤している人を何人も見ましたしパート・アルバイトにこの2日間義務付けを伝えず、放置しているチーフやそれを黙認する店長・次長なんかもいる始末。
半期で2日の取得義務を有給取得できるの限度日数のように扱ってる人もいました。
もちろん全員が有給をちゃんと取れていないわけではありません。
取れない理由も忙しすぎる場合もあれば、本人が忘れていたからという場合もあります。
小売に就職される方は(できるもんなら)安心して下さい(・∀・)
原則、有給休暇は拒否できない

有給休暇は申請すると会社側(正確には使用者側)は原則拒否できません。
上に書いたように、義務を果たして得た労働者の権利です。
拒否できません。
取得理由も会社に報告する義務はありません。
ぼくは会社の申請書に理由を書いたことなどありません。
聞かれても適当にごまかしてました(・∀・)
ただし、その申請者が休むと業務に影響が出てしまう場合は取得時季の変更を促すことができます。(時季変更権)
○5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用:労働基準法
時季変更権でできることは「有給の拒否」ではなく、「別の日に変えてね」ってことです。
ただし会社(使用者側)は変更日の指定まではしませんので、労働者側が再度日を変えて申請する必要があります。
なお時季変更権は、単に人がいないから~というだけでは使用できません。
例えば人がいないのは以前からで、それを会社側が放置していたなどの事情があれば、時季変更権は認められません。
シフト制の職場で、シフトを調整すれば有給を取らせても業務が可能なのであれば、そうしなければなりません。
まぁ従業員側が有給取得日を変更して、穏便に済ますことが多いと思いますが。
退職者へは時季変更権が使えない
退職者へは時季変更権は使えません。
退職日以降に時季を変えることが不可能なためです。
できることは、退職日を多少延期してもらえるように退職者と交渉するか、有給休暇の買い取り交渉くらいのものです。
辞める場合はこれをちゃんと知っておかないと、嘘で丸め込まれる恐れがあるので注意しましょう。
退職時に有給休暇を消化できない理由

上記のように会社側は有給の取得日を変更はできますが、拒否はできません。
では、なぜ退職するときに有給が使えなかった、ということが起きるんでしょうか?
使えない場合で多いのが以下の2通りです。
- 転勤先の出勤日が決まっていて、有給消化が間に合わない
- 会社が有給消化を拒否する
詳しく説明していきます。
転職先の出勤日が決まっていて、有給消化が間に合わない
よくあるのが、転職先の初出勤日が決まっていて、そこまでに有給を消化する日数が足りないということです。
例えば有給が40日残っていると、通常の休みと合わせて約2か月間休むことができます。
ですが、ここで転職先の初出勤日が1ヶ月後の場合は、取得できるのは1ヶ月間のみ。
この場合は未取得分の有給休暇はすべて捨てることになります。
在職中に転職先を決めてしまうと、こういうことが起こります。
転職先と話し合って有給消化後に出勤、とできればいいいのですが、転職先としてはなるべく早く来てほしい、という場合があります。
まぁ有給消化前提で考えてくれている転職先が多いので、転職先としっかりコミュニケーションを取っておけば大丈夫です。
ということで有給消をすべて消化したいなら、転職先の初出勤日にも注意してください。
内定欲しさに
「スグに出勤できます!」
なんて言わないようにしましょう(笑)
会社が有給消化を拒否する
ブラック企業にありそうな、強引に有給消化をさせないという場合です。
拒否された場合は以下の手順を参考にしてください。
労働組合があれば労働組合に相談
↓ない、してもダメだった
総務部があれば総務に相談
↓ない、してもダメだった
労働基準監督署に相談
ここまで来ると、だいたいOKです。
有給休暇の拒否は労働基準法違反なので、労基署が出てくると会社としてめちゃめちゃ困りますからね。
労働組合があるなら、労働組合への相談で解決できる場合が多いです。
どの会社でも「労働組合は会社の御用聞き組合」みたいな扱いを受けているんじゃないかと思いますが、労組が間に入って解決したり、問題点が明らかになったりする場合も結構ありますよ。
労基署への相談より心理的なハードルも低いので、最初のアクションとしておすすめです。
ぼくも退職時に
「引き継ぎがスムーズに行かない場合は有給を捨ててもらう」
と言われましたが、
「は?無理です。」
と言って、さらに人事にチクって有給は全て取得しました(・∀・)
労働基準監督署への相談手順
労働基準監督署への相談手順も紹介します。
社内で有給拒否の問題を解決できない場合、「労働基準監督署へ相談」に行きます。
労働基準監督署の相談員に事情を包み隠さず相談し、アドバイスをもらいましょう。
その後アドバイスを元に、会社側と再度交渉しましょう。
ここで
「労働基準監督署で相談したところ~」
など、労働基準監督署をチラつかせながら交渉すると、折れる可能性が高まります。
それでも折れない場合は、「労働基準監督署に申告」に行きましょう。
労働基準監督署への相談と申告の違い
労働基準監督署への相談と申告は明確に違っていて、
- 相談はアドバイスのみ
- 申告は労働基準監督署に対応を求める
という違いがあります。
よく「労基署は動いてくれない」という話がありますが、相談で終わってしまっている場合が多いのです。
最初から申告すれば、と思うのですが
「もう一度会社と交渉しましょう」
などと最初は相談に切り替えられる可能性が高いです。
相談に切り替えられた場合は、
「次に来た時は申告する」
ということを言っておきましょう。
できれば、日時と相談員の名前を控えておくと、次に来た時に
「以前相談した時に~というアドバイスを貰い、ダメだったら申告する事になっていた」
というようにスムーズに申告できます。
(違う相談員になっても、申告しやすいです。)
労基署を通してもダメということはないとは思いますが、もしダメな場合は法的手段に訴えることになります。
申告する場合は違法性を示す証拠が必要
初回でも、二度目でも申告する場合は違法性を示す証拠が必要です。
できれば会社側との交渉をスマホやICレコーダーで録音しておきましょう。
他には自分の有給休暇の残日数などがわかる資料(給与明細など)や就業規則、労働契約書なども揃えて持っていくと良いですね。
最近ではGoogleマップで自分の行動をタイムラインで記録することもできます。
サービス残業をした場合に、記録上の労働時間と実際の拘束時間を比べる材料として使えます。
自分の行動をGoogleに記録されているのがキモチワルイという人もいるでしょうが、特に何の弊害もないですよ(笑)
円満な有給消化のためにやるべきこと|できるだけ早く意思を伝える

円満に有給を消化、円満に退職するために必要なたった1つのことは、希望退職日のできるだけ前から会社側に退職を伝えることことです。
具体的には「3か月以上前」には伝えておくとよいでしょう。
3か月前に伝えると、有給消化に2か月必要だとしても、1ヶ月は引き継ぎに使うことができます。
転職が決まってから伝える場合は転職先が決まったらスグに伝えるようにしましょう。
会社からの引き留めで思うように話し合いが進まないこともあるので、余裕を持つようにするといいですよ。
ぼくがいた会社では、
部下が辞めると自分の評価が下がるから
という理由で、部下を辞めさせないように、
- 出勤日は会議室に缶詰
- 休日に電話を入れる&呼び出す
など、妨害工作にいそしむクソな店長もいましたからね…。
引き継ぎ業務などを踏まえ、できるだけ早く会社に退職の意思を伝え、退職日の相談を行うようにしましょう。
明日から来ない!は可能か?
以前いた会社で退職時に揉めに揉めて、
「もう辞めてやる!明日から来ないからな!」
という感じで辞めた人を何人か知っています。
この人たちは退職日を来なくなった日に設定され、有給休暇を全て捨てることになったようです。
しかし、
「この日に退職します。明日から有給消化するんで、今日が最終出勤日です。」
は可能です。
上で書いたように、退職日が決まっていれば、会社側は時季変更権を使えませんからね。
これでも揉めることは目に見えているので、全くおすすめはできませんが(^_^;)
なるべく円満に、スッキリ辞めるのがおすすめです。
退職日の延期と有給の買い取り

退職面談時に
- 後任が決まるまでは働いてほしい
- 仕事が一段落するまで待ってほしい
などと、会社側から退職日の延期を申し入れられることもあります。
もちろん拒否することもできますが、延期することも可能です。
どうするかは自分の事情や気持ちで決めて大丈夫です。
延期する場合は、
- 有給休暇の残日数
- 有給以外の休日
- 転職先の初出勤日
を確認して、職場最終出勤日のリミットを越えないように注意しましょう。
転職先の出勤日が決まっているなど、退職日が動かせない場合は 有給の買い取りを打診されることもあります。
これも拒否はできますし、買い取ってもらっても大丈夫なので、これも自分で好きなように判断してください。
なお、
「1ヶ月後に辞めたい。でも有給が全て消化できないから残った分は買い取って!」
などと、自分から申し入れてもまず認められません。
会社側に有給の買い取り義務はないのです。
ですので、有給の買い取りは考えない方がいいでしょう。
それより早めに退職を伝えて、円満な退職を目指すほうがよっぽどいいですよ。
ちなみにぼくは2か月延期を打診されました。
しかし、そこまでやる気はなかったので、1か月延期して、ボーナス日に引っかけて辞めました(狙ってた)
まとめ|有給消化は権利!最後くらいきっちり取ろう

- 会社側は有給休暇消化を拒否できない
- 消化できないのは、転職先への初出勤日までに消化できない場合
- できるだけ早く(3か月前には)会社伝え、退職日と有給消化の相談する
- 有給の買い取りは原則ない。
- 強引に消化させないなど、労働基準法違反の場合は出るとこ出る
ぼくは退職希望日の約3ヶ月前、1ヶ月延期になったから都合4ヶ月に退職の意思を伝えました。
そのおかげで有給は全て消化できましたし、後任への引き継ぎもしっかりやって、円満に退職できました!
退職時に有給をすべて消化することに気が引ける人もいるようです。
ですが残っている有給はその分これまでしっかり働いてきた証拠ですので、遠慮せずに消化しましょう。
ちなみにぼくは全く気が引けなかったです(笑)
明日から急に出勤をやめて、最後に憎き会社にダメージ与えてやる!
という考え方は、やめた方がいいですよ。
もう二度と関わらない人たちかもしれませんが、回りまわって、自分に悪影響があるかもしれません。
同じ業界で転職する場合は特にです。
この記事が有給消化の役に立てたらとても嬉しいです(・∀・)
退職するなら、うまく有給をすべて消化してくださいね!